私が、工場に配役になり、一番最初に話しをした受刑者Yさんのお話し。
50代、懲役1年2カ月。

食事をする席が同じテーブルであったのと配役が私の1週間先輩で教育訓練工場でかぶっていたということもあり、自然の流れです。
配役当初は人間関係も無く、孤独と不安で押しつぶされそうになりますが、直ぐに話し相手が出来たので今振り返ると良いスタートが切れたのかなと思います。

とある日の休憩時間。私は、Yさんに何で逮捕されたのか聞いてみました。

私 「Yさん、何でここに来たんですか?」
Y 「俺は、ルパン!」
私 「?・?・?」
Y 「盗みをやって、現行犯」もしかしてルパン三世の事か!
私 「なるほど・・・」

時間が無く、詳しい話しは聞ける状態ではなかったのですが、どうやらYさんは盗みを繰り返し、
懲役になったみたいでした。

その日の運動時間のYさんとの会話

Y 「俺は前橋刑務所にいたんで、何でも聞いてよ」ここは黒羽ですけど・・・
私 「前橋って何かすごい所なんですか?」
Y 「お前知らねえのかよ!前橋と言ったらヤ〇ザでスゲー所だよ!」
私 「はぁ~」
Y 「ところで、お前はどれ位、懲役くらったの?」
私 「全部で2年です」
Y 「お前さー。こういう所でのルールだけどよ・・・」
Y 「何年か聞かれたら、求刑〇〇年の懲役〇〇年と言うのがルールなんだよ。」
私 「はぁ~」
Y 「俺は良いけどよ~、他の奴に聞かれたら気をつけろよな!」先輩風を吹かせています。
私 「すいません」

私は、その場を去り、作業の事で聞きたい事があったので、元ヤ〇ザ屋さんの班長の所へ

私 「班長、〇〇作業はあれくらいのスピードで大丈夫ですか?」
班 「上出来だよ!用務者候補だからよ、頑張れよ!」
私 「はい。ありがとうございます。」
班 「ところで、お前、どの位くらったの」
私 「懲役2年です!あっ、すいません。求刑2年6カ月の懲役2年です。」
班 「ん、何で謝ってんの?」
私 「求刑〇年、懲役〇年って言うの教えて貰ったばかりなのに言い慣れていなくて・・・」
班 「そんなルールねえよ、誰に教えて貰ったんだよ?」
私 「Yさんです。前橋刑務所にいたから何でも聞いてくれよって言ってました。」
班 「おう前橋か。俺の知り合いが前橋にいてよ。Yってどいつだ?」
私 「あの人です」

班長とYさんの会話

班 「お前、前橋から来たんだって?」
Y 「えぇ。」
班 「何工場だった?俺の連れは、木工でよ~」
Y 「え~分類で工場には出ていません」※どの刑務所行くのか移送待ちの状態のこと
班 「そんなんで、前橋にいたとか誇張してんなよ!なめてんのか!」
Y 「すっ、すいません」
班 「何年くらったんだよ?」
Y 「1年2カ月です!」
班 「お前よ~(私を指さして)、こいつに訳の分からないルール教えたんじゃねえの?」
Y 「すっ、すいません」
班 「で、何やったんだよ」
Y 「ルパンです!」自信満々です
班 「ルパンじゃ分かんねえよ!宝石でもやったんか?」
Y 「いえ、鉄板です。工事現場の鉄板をやってました」
  ※後に自転車を盗んでリサイクルショップで換金していたコソ泥と判明(笑)
班 「そう言うのルパンって言わねえよ。ただのコソ泥だろ!」
Y 「すっ、すいません」

少しでも自分の地位を有利にする為に、自分の犯した罪や生い立ちなど誇張する人が、
多いようです。薄々は感じていたのですが、早い段階でオープンになったお陰で、
Yさんとどっぷりつるむ事が無かったのでラッキーでした。

この話しは、工場中に広まり、Yさんと話しをするのは認知症やちょっとネジがズレている人のみ。
いつもグランドや体育館の隅っこで寂しくしていました。
共同室では、同じ部屋の受刑者達に無視され続けていたようです。
しばらくして、認知症の新入り受刑者に、「話して来るなオーラを出しているから・・・」って、
強がっていましたが・・・

私見ですが、落ちる所まで落ちた状態で、見栄や恥ずかしさなんてないんですけど・・・
嘘や誇張してバレた時の方がよっぽど惨めで恥ずかしいですけど・・・



~元受刑者の私でも作れた太っ腹のクレジットカード~



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